残すところ後わずかとなった北京五輪。最高の盛り上がりを見せた一日となった。
まずは、シンクロ・デュエット決勝。五輪の正式種目となってから、日本は、全カテゴリーにてメダルを獲得しているが、五輪前今年4月に開催された五輪世界最終予選で、中国に負け、北京五輪前の下馬評では、ロシア、スペイン、中国、日本の順番となり、メダル獲得は危ぶまれていた。その事は、鈴木選手、原田選手も感じていただろうし、金子チームリーダーを含めたシンクロ関係者も感じ、プレッシャーの中、北京五輪までの4ヶ月を過ごしたんだと思う。恐らく、練習に明け暮れた4ヶ月間だったと思う。北京五輪では、予選を僅かのポイント差で3位で決勝に進出したが、得点競技であり、ライバルの中国双子ペアの地元中国での開催ということを考えると、ミスは一つも許されない状態で決勝に臨んだ。日本より先に演技した中国ペアが終盤の足技でミスを犯してしてしまったが、後で登場した日本の鈴木・原田組は、予選のFRの時以上の素晴らしい演技をしてくれた。得点が表示された瞬間の鈴木選手、原田選手の喜びの表情を見ているだけで、感極まった。二人を迎える金子チームリーダーの目にも涙が溢れていた。
そして、本当に最高の感動を与えてくれたのが、女子ソフトボールだ。午前に始まった決勝進出をかけた強豪・米国との対戦は、エース上野投手が、素晴らしいピッチングをし、強打米国打線を封じ込み、米国・アボット投手との息詰まる投手戦となった。お互いに譲らず、0-0のまま7回を終了。延長戦、8回からは、無死2塁から始まるタイブレーカーだ。つまり、延長戦からは、常にランナーを背負うピンチの中での投球となる。8回は何とか凌いでゼロに抑えたが、9回に米国の主砲バストスに豪快な3ランホームランを浴び、惜しくも、1-4で米国に敗れた。上野投手は、9回147球の力投だった。
米国に敗れた日本は、4時間半後、カナダに勝ったオーストラリアと決勝進出をかけ戦った。日本の先発は、米国戦に続いて上野投手だった。オーストラリアに初回に先制を許すが、4回に広瀬選手が2ランホームランを放ち、2-1と逆転。7回2死ランナーなしと、決勝進出まで後1人までこぎつけたが、なんと、同点ホームランを浴び、午前の米国戦に続いて延長戦へと突入した。延長に入り、何度も日本はサヨナラのチャンスを迎えるが得点できなかった。11回、上野投手が1点を奪われ、逆に追いかける展開となるが、11回裏、四番馬渕選手が気迫のタイムリーを放ち同点に追いついた。タイブレーカーが続く12回も上野投手がゼロに抑えると、12回裏、満塁としたところで、ジャパンの元気娘・西山選手が、右中間を破る劇的なサヨナラヒットを放ち、息詰まる激戦にピリオドをうった。
上野投手は、オーストリア戦も12回171球を投げ抜いた。米国戦と合わせ、一日で、21回318球6時間の熱投だった。ソフトボールは1試合7回なので、1日で3試合完投したことになる。普通では考えられない。日頃の練習の積み重ねと、五輪に対する熱い想い、そして、選手・監督・コーチが一丸となったチームワークが、上野投手の激投を支えたのだと思う。試合後のインタビューが、実に爽やかだった。
サヨナラヒットを放った西山選手については、今朝のフジテレビ『とくダネ』で特集で、西山選手が、生まれながらの心臓病を患っており、中学時代に、心臓移植手術を受けたということを知った。また、ソフトボールを始めたキッカケが、斉藤選手の五輪での活躍で、斉藤選手と一緒に日本代表で戦いたいという夢を追いかけ、難病と闘っていたということを知った。そんな娘を心配しながら応援する釣船業を営む父親の存在。そういうバックストーリーを知っていただけに、西山選手のサヨナラ打には、本当に感激した。明日の決勝は、北京五輪3度目の対戦となる米国戦だ。ここまで来たら金メダル獲らせてあげたいと思うが、勝ち負けというより、選手全員が悔いを残さない、素晴らしい戦いをしてくれたらと思う。がんばれ、ニッポン!!
ソフトボールの激戦と同じ時間に激戦が繰り広げられていたのが、野球の予選リーグ最終戦、日本vs米国だった。決勝トーナメントでの登板への調整を踏まえて、ダルビッシュが先発し、2イニングを投げ、3回以降は、マー君が力投した。川上が繋ぎ、米国打線をゼロに封じるが、打線は、何の工夫もなく、凡退のヤマをつくり、延長へと突入した。延長10回リリーフした岩瀬投手が伝家の宝刀スライダーで3者凡退に抑えるが、10回裏負傷出場の川崎選手のヒットを里崎が返せず、日本チーム初のタイブレークに突入した。大会前から短期決戦における星野采配に危惧していたが、ここで、理解しにくい、采配がでた。10回に良いピッチングをしたからか、なんと、岩瀬を続投させたのである。今シーズンの岩瀬の投球を見ていたら分かることなのだが、イニングを跨いでの登板はとても難しい。しかも、タイブレーク(無死1、2塁からスタート)である。通常であれば、ピッチャーは球児に、キャッチャーは矢野に替えるのが勝ちパターンだ。それを、何故か岩瀬を続投させてしまった。この試合に勝つと、準決勝の対戦相手がキューバになってしまう。負ければ韓国だ。キューバとの対戦を避ける為に、わざと負けるような投手起用をしたのだろうか。決勝トーナメント進出は決まっているので、今日、勝とうが負けようが関係ない。出来るだけ、投手をつぎ込まずに、決勝トーナメントに備えたい、そのような考えがあったからなのだろうか。北京五輪終了後、その辺の考え方について、星野監督が語ってくれるのを期待したい。決勝トーナメントを勝ち進む為には、女子ソフトボールチームのような選手・監督・コーチが一つになり、自分ひとりで決めようとするのではなく、チームを信じて、繋ぎの意識が重要となる。四球でもいい、死球でもよいから、なんとしても塁に出る、ランナーを進めると言ったボールに喰らい付くようなバッティングをしてもらいたい。
明日の注目は、ソフトボール決勝と、女子サッカー3位決定戦だ。ここまできたら勝って欲しいと思うが、勝敗は関係なく、力を出し切り、五輪史上の残る戦いをして貰いたいと思う。ただ、試合時間が重なっているから、応援するのも難しいなあ。