北京五輪が閉幕した。8月8日の開会式から24日の閉会式まで、多くの感動を味わせて貰った。開幕するまでは、聖火リレーによる混乱や、テロの危険性が叫ばれたり、北京で開催することにとても不安が大きかった五輪だったが、米国バレーボールチームの監督の親族が中国人に殺されるというショッキングなニュースがあったが、大きなテロ等は発生せずに、予定通りに全競技を開催し、閉会式を迎えた。日本選手団の獲得メダルは、金9銀6銅10の合計25個となり、前回アテネ五輪の獲得メダル金16銀9銅12の合計37個よりも、大きく下回った結果となった。ただ、前々回シドニー五輪は、金5(柔道4女子マラソン1)、銀8、銅5の合計18個と比べると、立派な結果だったように思う。
北京五輪の結果としても興味深いのは、金メダル9個のうち、7個はすべて2連覇という点だ。つまり、柔道の石井選手と女子ソフトボールの2個以外は全て2連覇である。2連覇したのは、今大会の金メダル第一号となった内柴選手に始まり、北島選手、谷本選手、上野選手、吉田選手、伊調馨選手の6人だ。6人に共通しているのは、アテネから北京までの4年間、決して順調だった訳ではなく、皆、モチベーションの低下や怪我に苦しみ、苦悩し苦闘した4年間だった。女子レスリングの吉田選手は、この中では、大きな怪我をすることなく、順調に五輪切符を手に入れた方だが、今年1月のW杯で敗れ連勝記録を119でストップするなど、大会直前に挫折を味わっている。どの選手も、金メダルの喜びを知っているからこそ、怪我で苦しんでも、そこから建て直してこれたんだろう。また、彼等を支える家族やコーチ、監督の支えがあったから、2連覇できたんだと思う。それぞれの金メダルにドラマがあり、それを知ると、より感動も深まった。
北京五輪で多くの感動を貰ったが、中でも最も感動した競技は、女子ソフトボールと、北島選手の100M平泳ぎ、そして、陸上男子100Mx4リレーだ。VTRを何度見ても、また、感動が蘇ってきて、目頭が熱くなる。金メダルは獲れず惜しくも銀メダルに終わった、柔道の塚田選手、体操個人総合の内村選手も、とても感動した。
トリノ五輪でも、メダル獲得まで後一歩の4位となった選手が多く、とても記憶に残ったが、北京五輪においても、4位となった選手の活躍がとても印象的だった。体操個人総合で、つり輪での落下のアクシデントを乗り越え最後まで“美しい体操”を世界に見せつけ4位まで追い上げた冨田選手、女子サッカー初となるベスト4進出をした“なでしこジャパン”、世界ランク1位を敗る大金星を挙げた女子バトミントンダブルスの末綱・前田両選手、卓球女子団体、男子トランポリンの外村選手、射撃女子クレートラップの中山選手。皆、メダル獲得はならなかったが、記憶に残る価値のある4位だった。野球も、がっかりさせられたという意味で記憶に残る4位だった。
多くの感動を与えてくれた北京五輪だが、やはり、大会前より懸念していた通り、中国人の観戦マナーはまだまだ未熟だったようだ。反日感情が強いので、日本の選手は、常にブーイングの中の戦いとなっていた。
また、スポーツマンシップに欠く行動をとった選手がおり、後味の悪い大会でもあった。レスリングの表彰式で、銅メダルを置いたまま立ち去ったスウェーデンのアブラハミアン選手に、テコンドーで、レフリーに暴行をはたらいたキューバのマトス選手だ。
北京五輪は、時差が1時間しかないので、ライヴ観戦がとても難しかった。次のロンドン五輪は、時差があるので、寝不足さえ我慢できれば、じっくりとライヴ観戦することができる。北京五輪は、連覇を達成した選手の中で、引退する選手もでてくると思う。そうなった時に、北京五輪と同じあるいはそれ以上にメダルを獲得しようとすると、後継者が育っているのかが重要になってくる。今から、ロンドン五輪がとても楽しみだ。