10月26日、自分がもっとも愛するバンド”Queen”が20年ぶりの来日公演を行う。その日に向け、数日前から、会社の行き帰りに、iPodでQueenばかり聴いていた。ライブ当日は、朝から、何かドキドキ&ワクワクとしていた。久しぶりに、Bryan MayやRoger Taylerに会えるからだ。
新宿コマ劇場で開催されていたロックミュージック『We Will Rock You』にも2度行った。その時から、Queen+Paul Rodgersが日本に来ないかと待ちわびていた。その長年の想いが今日叶おうとしているというだけで、こみ上げて来るものがあった。
埼京線に乗り、さいたまアリーナに向かう道中も、当然のように、iPodでQueenを聴いていたのだが、これから始まるライブの事を考えるだけで、気分が盛り上がっていった。さいたま新都心駅を降りると、今日のライブに行こうとする人で、駅が溢れていた。駅改札をでると、自然と早歩きになった。「早く会いたい」気持ちが高まっていた。
周りを見回すと、自分と同じような人ばかりだった。会場に入って席をさがすと、アリーナのかなり前方だった。近くで、Bryan Mayを見れる。想像するだけで感動してしまった。
開演時間7時を過ぎたころから、BGMが流れだした。「AC/DC」である。今か今かと、ライブが始まるのをワクワクしながら待つ、この時間が、昔から好きであった。7時20分頃に、会場の灯りが消された瞬間に場内総立ちとなり、「Reaching Out」でライブが始まった。Paul Rodgersがまず現れ、その後に、Bryan Mayが登場した。Bryanも久しぶりの日本でのライブに意気込んでるのか、幕に引っ掛かってコケてしまった。ただ、すぐに立ち上がると、20年前と変わらぬギタープレイを始めた。
その後、「Tie Your Mother Down」「Fat Bottomed Girl」と初期のヒットナンバーが続いた。自分も完全に20年前にタイムスリップし、スタートから、フルスロットル状態になっていた。
PaulのFree時代のヒット曲「Wishing Well」(自分にとっては、どちらかというとFreeのオリジナルよりも、Gary Mooreのカバーの方が馴染みがある)や、「Another One Bites The Dust」、「Crazy Little Thing Called Love」といった中期のヒットナンバーも演奏された。自分がリアルタイムでQueenを聴くようになったのは、80年にリリースされた『The Game』からであるが、この2曲は、このアルバムから生まれたヒットナンバーである。聴いていると、自然とその当時の事が思い出され、熱いものが込み上げてきた。
Queenのライブは、数々のお決まり事がある。正に様式美の世界である。そのお決まり事の一つが、ライブ中盤に演奏される「Love of My Life」だ。アコースティックギターをBryanが持つと、ファンは、大歓声をあげ、「Love of My Life」を待つ。「Do you wanna sing?」とBryanが言うと、それに大歓声で答える。「今日、ここに来れなかった人がいる。それはFreddie Mercury」と言って、「Love on My Life」を弾きはじめた。20年ぶりの「Love of My Life」の大合唱だ。今回のライブで何度か目頭が熱くなった瞬間があったが、最初がこの時だった。場内のスクリーンに、観客のお姉ちゃんの映像が映った。涙を流しながら、「Love of My Life」を歌っていた。自分も同じ気持ちだった。
「Love of My Life」が終わると、「日本のファンの皆に特別に次の曲をプレゼントする。だって、日本のファンの事を愛しているから。本当だよ」と言って、「手をとりあって」を歌い始めた。自分が過去に行った83年、85年の来日公演では、この曲は演奏されなかったので、今回初めて、一緒に歌えて嬉しかった。
Rogerのドラムソロ、Bryanのギターソロが続いた後、Rogerが、「These Are The Days Of Our Lives」を歌った。スクリーンに、Queenの初来日の時の日本庭園の映像が映し出された。若かりし頃のQueenのメンバーの姿と、Rogerの歌声がマッチしていた。Freddieの笑顔が映し出された時、感動が頂点に達していた。このライブで最も感動した瞬間だった。
その後は、「Radio GA GA」、「I Want it All」、「Can' Get Enogh」とノリノリのナンバーが続き、一気にクライマックスへ流れていった。スクリーンに、Freddieが登場し、「Bohemian Rhasody」を歌い始めた。Betty BoopのTシャツを着ていた。BettyちゃんのTシャツを着こなせるロッカーはFreddieしかいないなあと思った。
" Goodbye everybody. I've got to go. Gotta Leave you all behind and face the truth. Mama. I don't wanna die.
I sometimes wish I'd never been born at all"
このフレーズを歌う今は亡きFreddieの姿に、胸が詰った。これも運命なんだろうか。Billy Joelが歌ったように"Only the Good Die Young"なのだろうか。よくも、「Bohemian Rhapsody」のような曲を作ったなあと今更ながら感動し、こんな曲が書けるアーティストは生まれてこないだろうと思った。
アンコールの1曲目は、「Born to Love You」だった。恐らく、日本のイベンターから強くリクエストされて、採用されたんだと想像できるが、Bryanのアコースティックギターに合わせて、Rogerが歌った。日本公演のみ演奏ということだったので、バンド演奏ではなく、Bryanのアコースティックギターのみとなったと思われるが、アコースティックバージョンもとても格好良かった。この曲は、元々は、Freddieのソロアルバム「Mr.Bad Guy」に収録され、シングルカットされた曲で、日本では、ノエビア化粧品のCMに使われていた。その後、Freddieの死後リリースされたQueen最後のアルバム「Made in Heaven」に、バックトラックを取り直し、Queen名義で収録された。つまり、Freddieが亡くなってから、ライブをしてない訳なので、「Born to Love You」のライブ演奏は、世界初という事である。
「Show Must Go On」、「All Right Now」と続いた後は、Queenライブの最後のお決まり事、「We Will Rock You」「We Are the Champions」「God Save the Queen」が演奏され、20年ぶりの来日ライブは幕を閉じた。
20年ぶりに会ったBryanとRogerは確かに歳をとっていた。ただ、ギターを弾いている表情や、ドラムを叩いている表情を見ると、ロック少年のように若々しく生き生きとしており、昔と変わっていなかった。自分も、20年前と同じように、感動することができた。まだ、素直に感動できる純粋な心が残っている事を知れたのが自分でも嬉しかった。
ただ、身体は、確実に若さを失っており、オープニングから、立ちっぱなしで、ずーっと腕を上げていたので、腰や膝、肩が痛くなり、つらかった。
学生時代、音楽特に洋楽にハマっていた。自分もステージに立ちたいと思い、友達と一緒にバンドを結成した。アルバイトしてギターを買い、必死に練習した。ただ、人を感動させるような才能は持ちあわせていなかったので、バンド活動は、あくまで趣味で終わった。ただ、その頃から、「人に夢と感動を与える」事をしたいと思うようになっていた。自分がステージに立って、感動させることはできないが、バックステージでなら出来るのではないかと思うようになった。そう考えるようになって20年が経つが、今、音楽に携わる仕事をしている。今では、当たり前のように思ってしまっているが、学生時代の音楽に対する純粋な気持ちを思い出し、また、音楽に携わることができている事に感謝して、もっと、真剣に音楽に対して向き合って取り組んでいくべきだなあと思った。
※ Paul Rodgersは尾崎紀世彦に、Bryan Mayは、のっぽさん(NHK「できるかな?」)に似ていると思った。また、Roger Taylerはかなり太っており、CCBのドラムみたいになっていた。
※ 10月25日は、8回目の結婚記念日という事もあったので、1日遅れのお祝いという事で、チケットをプレゼントし、嫁はんと一緒に行った。昨年は、Eaglesだった。とても、良い結婚記念日となった。