国際フォーラムAホールにて、10時から、アップル社のスペシャルイベントが開催された。イベントの主旨・概要は、招待状には記載されていないが、どういうイベントなのかは、暗黙の了解で分かった。
「9時半までに来場して下さい」との記載があったので、9時20分に有楽町駅に着き、国際フォーラムに向かうと、たくさんのiPodのポスターが掲出されていた。
そのポスターを見ながら、Aホールに進んでいくと、若干、気分が高まっていった。受付で、社名と名前を言い、パスを受け取り、会場の中へ入った。
会場の中に入り、モニター席の後の席に座った。BGMにウルフルズが、流れていた。「やっぱ、ライツスケールかあ」とちょっとあまり面白くない感じがした。「色んな音楽関係者が来場しているのだから、国内アーティストではなく、U2とか海外のiTMSとの関係の深いアーティストの楽曲を流せばいいのになあ」と正直思った。
定刻の10時を少し過ぎると、会場の明かりが消され、ステージ上に、アップル社スティーブ・ジョブズCEOが現れると大きな拍手が起こった。
ジョブズ氏は、まず、アップルストアの現状をビデオを交え、8月6日に、渋谷にアップルストア4号店が開店すると話した。その後、iPodが、世界各国でNo.1のシェアを占めており、日本についても、今後、シェアを伸ばしていくだろうとコメントをしたのち、本日のメイントピックスへと移った。
iTunes Music Storeの現状について語り始めた。世界19カ国でサービスをスタートし、どの国でもNo.1のシェアを誇るiTMSが、20カ国目として日本を選び、サービスをスタートすると発表すると、大きな拍手が起こった。
「iTMS-Jは、”Made for Japan”であり、”Made in Japan”である」とコメントすると、更に大きな拍手が起こった。ふと、何かに似てるなあと思った。そう、「ジャパネットたかた」の高田明社長である。巧妙なしゃべりで、聴衆をひきつける姿は、まさに、ジョブズ氏も高田明社長も同じだと思った。
「iTMSは、全世界で累計5億ダウンロード販売を上げ、全世界音楽配信市場の85%のシェアを誇っている」「日本でも、15以上のレコード会社から楽曲提供を受け、100万曲販売し、今後も日々楽曲数は増えていく」と宣言した。
その後、実際に、iTMS-Jがどういうサービスなのかを、ジョブス氏自らが、iTMSを立ち上げ説明していった。
スクリーンに映し出されたiTMSを観て、正直感動した。今まで、iTMSオープンに向け、色々と準備をしてきたので、何かちょっとした達成感のようなものを感じた。自分の会社の関係するアーティストのジャケット写真が写し出されると、感動してしまった。
スペシャルゲストとして、Fuji Rockで来日していたBeckが、ステージに上がり、2曲演奏した。B'zがゲストじゃないかと噂されていただけに、ほっとしたともに、本当の意味でのサプライズゲストだったので、とてもラッキーな気分になった。
ジョブズ氏のコメントで気になることあった。「エイベックスの松浦さんには、最初にサインをしてもらいとても感謝している」とのコメントだ。それを聞いた時、「なんで、エイベックスを持ち上げる必要があるんや」と思わず呟いてしまった。エイベックスが、最初にサインしたレコード会社というのは間違いだ。メジャーレコード会社の中で、一番最初に合意したのがエイベックスというのが、正しい。しかも、日本以外19カ国のiTMSでは、メジャーレーベルもインディーズレーベルも関係なく、1曲の価格は同一になっている(米国の場合、1曲99セント)にもかかわらず、日本だけ、メジャーレコード会社から楽曲提供を受けるために、150円と200円の2種類の価格帯が生まれることになってしまった。150円が合意できないのであれば、エイベックスも、他メジャーとも、iTMSは契約しなければ良かったと思う。iTMSの魅力は、メジャー、インディー関係なく、新譜、旧譜も関係なく、良い音楽を分かりやすく紹介することにあり、また、他の音楽配信サイトが、バナー広告等が掲載されていることにより、編集が完全に独立してないことに対して、iTMSは、バナー広告は一切なく、編集が独立して、良いと思う音楽を編集者の意思で自由に紹介していることにあると思う。
翌日の日経新聞では、ソニー、ビクター等日本のメジャーレコード会社の参加なしに成功は難しいといった内容の記事が掲載されていたが、これは、間違いだ。iTMSに参加するかしないか、或いはどこで楽曲を売っていくのかどうかを最終的に決めるのは、レコード会社ではなく、アーティストであるという事を知らない素人記者が書いた記事に過ぎない。アーティストは、メッセージを楽曲に託し、そのメッセージを、より多くの人に伝えたいというのが一般的だ。音楽好きがたくさん集まるお店に自分の楽曲が販売されないというのは、アーティストが望むことではない。iTMSも、無理に、メジャー会社の論理に合わせる必要はなく、iTMSの思想に合うレーベル、アーティストだけを集めれば、自然とユーザーが集まると思う。ユーザーが集まれば、おのずと、メジャーレーベル所属のアーティストも、楽曲提供したいとiTMSへ集まってくる筈だと思う。それだけに、150円だけでなく、200円のプライスラインを受け入れた妥協が残念で仕方ない。
iTMSは、オープン4日間で、100万ダウンロード販売したと発表された。これは、ユーザーのニーズがどこにあるか分かっていたら、分かりきっていた事だ。iTMSオープン時に参加しなかったソニー、ビクター、ワーナー等のメジャー会社も、近いうちに、必ずiTMSに参加する事になるだろう。メジャー会社はこの流れを止めたいだろうし、止めようと色々と頑張っているが、世の中の流れは止めることはできない。日経新聞が危惧する必要もなさそうだ。