エチオピアの飢餓救済の為に開催された『Live Aid』から、20年たった今年、7月6日にスコットランドで開催される8カ国首脳会議『G8』に参加する各国首脳にアフリカの貧困撲滅を訴えるチャリティーライブ『Live8』が、LondonのHyde Park他、全世界9カ国で100組のアーティストが参加し、行われた。
自分は、85年の『Live Aid』のことは今でも鮮明に覚えている。野外フェスで、これほどまでに大規模で豪華なメンバーが集まったライブはないと思う。フジテレビ(関西在住だったので、関西テレビ)で、故・逸見政孝さんの司会で生中継されたが、一睡もせずにテレビの前に釘付けになって観た。
ウェンブリースタジアムのラストで、ポール・マッカートニーが『Let it Be』を歌い、最後のコーラスで、主宰者であるボブ・ゲルドフや、ピート・タウンゼントがステージに現れると、会場が一体になって『Let it Be』の大合唱に繋がった。そして、曲が終わると、ボブ・ゲルドフが肩車され、ガッツポーズをすると、この世界初の試みを実現させたボブ・ゲルドフに対して、賞賛の歓声と拍手が贈られた。すると、ステージに、出演アーティストが続々と上がってきて、Band Aidの『Do They Know It's Christmas?』が始まった。
サビが始まる前に、ボブ・ゲルドフが、拳を挙げながら、叫んだ。
"Singin' to the World!!”
"Feed the World, Let them know it's christmas time!"
この瞬間、何とも言えない感動を覚え、涙が流れてきたのを、今も良く覚えている。
あれから20年後の今年、『Live8』をとても楽しみに迎えた。20年前は、VHSビデオ録画したが、今年は、ハードディスク録画をした。デジタル技術の進歩は著しい。夜10時にスタートし、翌朝8時過ぎにフィナーレを迎えた。20年前は、一睡もしなかったが、今年は、翌朝から法事があった事と、何より年を取ったこともあり、約90分だけ仮眠をしてしまった。
ポールとU2の『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』で幕開けてから、最後のポールの『Hey Jude』まで、90分の仮眠はあったが、アーティストの素晴らしいパフォーマンス満載で、懐かしのバンド再結成等内容盛りだくさんで、音楽イベントとして、とても楽しかった。
ただ、『Live8』を観終わっての率直な感想だが、20年前の『Live Aid』の時に経験した心の底からこみ上げて来る感動は、正直なかった。これは、自分が年を取ったせいもあるが、規模は前回より拡大にしているにもかかわらず、全体の盛り上がりに欠いた点があったのも大きいと思う。
『Live Aid』と比べての違いとしては、
1.今回、Pink Floydの再結成という目玉以外に、インパクトのある再結成やスペシャル編成が少なかった。前回は、Led Zeppelinの再結成があったり、StingとPhil Collins、Eric ClaptonとPhil Collins、Mick JagerとTina Turner、Bob DylanとKieth、Ronnieのトリオギター等々、前回の方がインパクトが強かった。
2.アメリカ会場の規模が小さくなっていた。前回は、ウェンブリー(英国)とJFKスタジアム(米国)の2会場で、ほぼ同等の規模で行われたが、今回は米国会場は出演アーティストも減り小規模になっていた。
3.上記2にも関係するが、前回は、英国、米国の2会場で時間差をおいて始まりフィナーレを迎えたが、今回は、ロンドン会場のフィナーレが全会場のフィナーレとなっていた。ロンドン会場のフィナーレを観たあと、まだ、米国会場のライブは続いているものだと思ってテレビを観ていたら、ロンドン会場のフィナーレが全会場のフィナーレであることを暫くして分かり、ちょっとがっくりしてしまった。
4.主演アーティストに大きな変化がなかった。
前回と比べて出演アーティストに余り大きな変化は無かった。Coldplayや、Keane、Linkin Park等々、今回が初めてで、とても素晴らしいアーティストもいるのだが、やはり盛り上がっていたのは、Paulや、U2、Sting、Stevie Wonder、Pink Floyd等々、80年代以前のアーティストばかりで、90年代以降のアーティストに影響力があまり感じられなかった。
Paulが死んでしまったら、誰がトリを務めるのか疑問に感じた。
Stevieだろうか? ビートルズナンバー以外に、出演者みんなが参加できるスタンダードナンバーがあるのだろうか?
5.Queen、Fredieがいないことにとても物足りなさ、寂しさを感じた。
『Live Aid』でのFredieのパフォーマンスは、いつも以上の魂が込められており、最高のものだった。
今回のメッセージは、貧困撲滅(Make Poverty History)であり、G8に集まる各国首脳に対して、アフリカ諸国への債権放棄を訴えているものだ。確かに、アフリカで飢え死にして行く子供達の映像をオンエアする等、人々に今アフリカが直面している危機を知ってもらうという事で、意味はあったと思う。ただ、債権放棄するだけでは、アフリカの飢餓撲滅は有り得ない。やはり、アフリカの人々が自立できるようにしなくてはならず、そのためには、お金も必要だが、産業が必要になってくると思う。また、産業を生むためには、当然お金と教育が必要なってくる。
日本は、アフリカ諸国に対するお金と人的協力は、世界No.1であるが、このことは、欧米諸国にあまり知られていないのが現実だ。小泉首相には、G8にて、日本のアフリカ諸国における実績をアピールし、他首脳陣に対して、債権放棄後のアフリカ自立に向けての具体的対策をリーダーシップをとって提案して行って欲しいものだ。